【白猫】創作小話:女王と騎士

「おや? カレンではないか」
 突然そう話しかけられたカレン・ガランドは、しかしそれに即応できなかった。
 即応できなかったのは、話しかけられたのが不意打ちだったからではない。
 ただ、その声があるはずがない人物のものだったから、動揺してしまったのである。
「違わぬよな? そなたであろう?」
 そんなはずはない……と思いつつ振り返り、カレンはそこにあるはずのない人物を確認した。
「女王陛下……なぜここに……」
 それは、カレンが主君と仰ぐガランド王国の女王、インヘルミナ・B・ガランドその人に間違いなかったのである。
「ふむ? 何のことはない。ここは我が国の同盟領の1つでな。わらわの別宅もここにあるのじゃ」
「は!?」
 思わず敬語も忘れ、素っ頓狂な声を出してしまったカレンであった。

「……そ、そうですか……」
 カレンは脱力しながらつぶやいた。
 インヘルミナの話では、最初こそ『征服女王』の名に相応しく、飛行島を征服しようとしたが、それは諦めたとのことだった。
 この島の連中はお人好しばかりではあるが、いずれも飛行島の主に信頼を寄せており、そこを切り崩すことはできなかったこと。
 そして、武力で制圧しようにも、飛行島は文字通り空を飛んでおり、飛行艇で襲うとしてもいくらガランド王国としてもそれほどの戦力は用意できず……そして、この飛行島の住人は多くが冒険家であり、戦闘力には長けてること。
 また、冒険家ではない者も多いが、その場合でも他国の国家の王族やら貴族だったり、帝国の軍人だったりと多種多様。
 むしろ下手にここを一国が手を出そうものなら、国際問題になりかねない。
 なので『同盟』という形で落ち着いたという。
 とはいえ、ガランド王国に何かありし時は、支援を受けられることになってるというだけでもかなり大きな意味がある。
 それはいいのだが……。
 最近よく女王が不在なことがあるとは聞いていたが、それはことごとくこの飛行島に来ていたからのようだ。
 支援の見返りに何と女王自らが槍や魔術で冒険家まがいのことをして手伝っているというのだから……脱力もしようものだ。
 ……そいえば自分も最近そう言う手伝いしている気がするが。
 まあ実際、それはいい気晴らしではあるのだろう。
 心なしか、女王は玉座にある時より快活に見えた。
「して、そなたは何故ここにおるのじゃ?」
 当然と言えば当然の質問をされた。
 剣誓騎士団の副長という立場では、そうそうこんなところに来ることはできないのだが……。
「えと、団長探しに来てまして」
 今度はインヘルミナが呆れ顔。
「まあ、団の運用はヘクトル様がいれば問題ないのもあって……」
 剣誓騎士団の団長であるディーンは、そもそものモチベーションが『人に褒められたい』という、およそ騎士としてはおかしい人物だ。ただ、微妙に間違ってないのが残念なところでもある。
 そして、普段の騎士の任務より、この島が仲介してくれる冒険家としての仕事の方が……実は、結構感謝されることは多い。
 しかも騎士団は現在先の争乱からの立て直しで、大規模な任務を行うことはできない状態だし、ディーンはいざという時にいてくれればよくて、通常の任務はヘクトル王一人で十分こなせてしまう。
 そんな状況のため……ディーンは時々……というよりは隙を見て頻繁にこの飛行島にやってきてるらしい。
 飛行島もまた、先の争乱に巻き込まれてその事後処理のために近くに停泊(?)してるからというのもある。
 まあ、飛行島はどうやら《闇》の勢力とは正面からことを構えているようので、剣誓騎士団としても協力体制を築くことは大いに意味がある。
 だから全く無意味ではないのだが……。
「そなたも苦労してるのだな」
 その言葉は、女王としてというより、従姉としての言葉のようであった。
 実のところ、カレンはこの少し年上の従姉が苦手であった。
 先王の娘であり、王位継承を自分の父と争った人物。
 ともすれば、内乱になるところを、父が彼女に恭順を示したことでそれは避けられたが、一歩間違えば連邦全てを巻き込むほどの内乱になる可能性すらあったという。
 一度ならず、父になぜ恭順したのかを聞いたことがあるが、父ははぐらかして教えてくれなかった。
 かといって、まさか女王に聞くわけにはいかなかったのだが……今なら、あるいは。
 そう思ったカレンは、思い切ってインヘルミナに聞いてしまった。
「なぜ……私の父は、陛下に恭順を示したのでしょう」
 後で考えてみれば、この発言は己の立場を不服としてたもので、叛意あり、と思われても仕方のないものだった。
 思い返しても慄然とするが、当時はそこまで考えていなかったし……インヘルミナはそれを鷹揚に受け取ってくれた。
「ああ、娘の立場では当然か。何、簡単な話だ。貴公の父上が王になれば、その次は貴公の姉が王になろう。そうすればどうなったと思う?」
 カレンは思わず呆気にとられた顔になってしまった。
 今回の事件の首謀者、ミューレアは、それまでは剣誓騎士団の一員として、非常に優秀な人物だった。
 信奉者も多く、インヘルミナとほぼ同年代であり、政治的能力も魔術も女王に引けを取らない、と評価されていた。
 人によってはインヘルミナ以上である、と評価する者もいた。
 ……いや、かつては自分だってそうだった。
 実際、父を王に、と推していたいた一派は、実際にはその次にミューレアが王になることを期待してた者も少なくはなかっただろう。
 だが、ミューレアはその突出した才ゆえか、あまりに危険な思想に囚われていた。
 一番近くにいたはずの自分でも全く気付いてなかったというのに――。
「あれは昔から危なっかしかったが、長じてどんどん危険な方向になっていたからな。そなたの父ですら怖れるほどに」
 またもや知らない話になっていた。
 父が姉を恐れてた……?
「まあ、あれもそなたには優しかっただろうしな。知らなくとも無理はない。だが、アレは王者に必要な覇気ではなく、全てに対する諦観から来る破滅的願望を持っておった。だから、アレを継承権者とするわけにはいかぬ。ゆえに我は、断固として王位をくれてやるつもりはなかった。これでもわらわは、祖国を愛しておるからな。それに、娘たるそなたには悪いが、私の方が貴公の父より王者として優れている、という自負もある」
 あらためて――本当にあらためて、カレンは自分がいかに子供だったか、護られた存在だったかを思い知った。
 姫ではない、騎士だ、と言ったところで、現実はこれだ。
 まさに籠の中の小鳥ではないか。
「そなたからすれば、姉があのようなことをやってショックではあったと思うが……?」
 インヘルミナはそこで言葉を止めた。
 なぜか、カレンが笑っているように見えたからだ。
「どうした? 何かおかしなことでも言うたか?」
 その言葉に、カレンはゆっくりと首を横に振る。
「いえ――自分がどれだけ未熟であったか、再確認できた――それだけでも十分意味があったと……そう思えただけです」
 過去はもう変えられない。
 何も知らなかった自分を叱咤しても、それは反省するという行為でしかない。
 大事なのは、その過去を踏まえてこの先をどう歩むか、だ。
 そして実は、まだ何も終わってはいない。
 姉は帝国へ亡命したと聞いている。ならば、いつか対峙することもあるやもしれぬ。
「女王陛下」
 あらためて、カレンは仕えるべき主君を見据え、その膝を折った。
「改めて、我、カレン・ガランドは非才なるこの身の全力を以って、陛下と国の力となることを誓います」
 それは、忠誠の誓約。ただ、かつてとは違う。
 全てを分かった上での誓約であり、同時にそれは、姉との決別を意味していた。
「……ふむ? よかろう。カレン・ガランドよ。汝の尽力に期待しよう」
 その意図までは伝わっていないかもしれない。
 ただそれでも、カレンはこの女王の元、祖国のために尽力することに、もはや何の迷いもなくなっていた。

w562.jpgw563.jpg

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てきとーに作りました。
作ったのは結構前なんですが、手直ししてたら遅くなってイベント終わってしまった(ぉ
正直イベント的に、インヘルミナは出てこないとおかしくないか?というレベルでしたねぇ。
革命軍についてもメグの個人的な恨みだけであの場にいたので、あまり関係ないし。
実質は連邦の暴走を帝国と英雄?が止めただけとも。
Soul of Knightsは、パーツは悪くなかったのに、全体的に微妙になってしまう典型的な話だったなぁ、と思いました。
(某ス○イルプ○キュアのよう<マテ)
じゃあどうすればよかったのか、となると……さすがに即答できませんが、あまり各自の立ち位置は変えなくても面白くはできると思います。
ああ、あとキースはどう見ても英雄だったと思うんだー(笑)

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Author:ライン
いらっしゃいませ。
ここでは、コロプラのゲームアプリ『黒猫のウィズ』と『白猫プロジェクト』のプレイ記録を連ねて行くと思います。
2017年から『ファイアーエムブレムヒーローズ』『Fate Grand Order』が仲間入りしました。
黒猫は若干課金、他は今のところ課金せずにやってます。

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